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MISTY CASTLE -KANON 共犯者?-

共犯者?

今日も肉まんを求めてあたしは商店街へと足を向ける。
冬だけあってまだまだ寒いが、肉まんのためならこの寒さも大したことはない。
「今日は何個買おうかなぁ〜。 お金もたくさん持ったし、奮発して昨日の2倍買っちゃおうかなぁ〜♪」
そんなことを考えながら商店街に入り、いつものお店へ向かう。
「肉まんくださ〜い♪」
「あっ、ごめんよ。今日はもう売りきれちゃったんだ」
「あうぅぅぅぅ〜、肉ま〜ん・・・」
「本当にごめん、また明日きてくれ、な?」
「はぅぅぅ〜、分かった・・・」
あたしがさっきまで考えていたことが全て水の泡となって消えてしまった。
手ぶらで帰るのも何なのでマンガを買いに本屋に向かう。
「何か面白そうなマンガあるかなぁ〜」
店の中をくまなく歩いてみる。しかし良さそうなマンガは見つからなかった。
「ありがとうございました〜♪」
店を出る時に店員の声が耳に入る。
(何よぉ、そっちはありがたくても、こっちは散々よ!!)
声にはならない虚しさ。結局のところ、今のあたしは家を出た頃と何も変わっていない。
「あうぅぅぅぅぅ〜、帰る・・・」
仕方なく諦めて家路につく。何となく足取りが重い。とその時、後方から駆けて来る一人の少女。
袋を片手に持ち、もう一方の手では人の波を掻き分けている。そして、少女が一言。
「どいてどいて〜!!」
気がついた時には、既に眼前にその少女はいた。
そして次の瞬間、あたしは宙を舞った。続いて地面に叩き付けられる。
少女は倒れたあたしに近づいてきて
「ねぇ、大丈夫?」
と聞いてきた。
「はぅぅぅぅ〜、大丈夫なわけないでしょう〜」
あたしは思っていることをストレートに言った。
「ごめ〜ん、でも、お互い大した怪我はないようだし、よかったよ」
少女が微笑みながら言う。どうやら悪意はないらしい。と突然
(キュルルルルル・・・)
お腹の虫が鳴り出した。
「ねぇ、キミ。お腹空いてるの?」
「あう〜〜〜」
「じゃあ、さっきのお詫びにボクのたいやきをあげるよ。えっと・・・(ゴソゴソ)はい♪」
「いいの?」
「うん、もちろんだよ♪」
差し出されたたいやきを受け取る。
「(はむ、もぐもぐ・・・)おいしい〜♪」
「そう、よかった♪」
「ねぇ、これって何?」
「ん、たいやきだよ」
「たいやき?」
「うん、(はむ、もぐもぐ・・・)おいしいよね〜♪」
肉まんほどではないが、たいやきという物も悪くはない。
「ねぇ、これ、どこで売ってるの?」
「え〜っとね〜、向こうの方の屋台だよ」
少女が商店街の奥の方を指差す。
「ふ〜ん・・・じゃあ、あたしちょっと行ってくるね」
「えっ!? 今はまずいよ」
「どうして?」
「いや、えっと、その〜・・・そう、屋台の人、休んでるかもしれないし・・・」
「はぅぅぅ〜・・・そうなの?」
「ん〜、でも大丈夫、きっといるよ」
少女はひどく慌てているようだったが、何故かを問い詰めたりはしない。
あたしはおとなしく少女の言葉を信じて屋台のある方へ行ってみることにした。
少しして教えてもらった屋台を見つける。
「すいませ〜ん、たいやき3つくださ〜い♪」
「はいよ!」
威勢の良い声で返事をした屋台の人は、手早くたいやきを袋に詰めあたしに手渡した。
「えっと、にひゃく・・・」
そこまで言って屋台の人は突然態度が急変した。
「あっ、あいつ、さっきの・・・!」
「えっ?」
「くそ〜っ、今度こそ捕まえてとっちめてやる!」
あたしを放っておいて、屋台の人はある人物を追って行ってしまった。
追われている人は
「うぐぅ〜!」
と叫びながら走っているあたしがたいやきをもらった少女だった。

Fin_


〜あとがき〜

当作品は本来ならば完全に寄贈作品にする予定だったのですが、
寄贈サイト様が中々掲載をされない、というより多分忘れてしまっているようなので、
自サイトに掲載してしまいました(^^;)
祐一と美汐は使用禁止という指示を受けていた為、登場キャラが限られて苦労しました。
でもまあ、こんな事件があってもおかしくないということで(笑)


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